どうして人は旅に出るのだろうか。
昔から問いかけられてきたこの質問に対するひとつの答えとして、「非日常的な体験をしたいから」というものがあるだろう。
では、その“非日常的な体験”とは何なのだろうか。
今回、盛岡へ旅行に行ってみて、一番楽しかったことを振り返ると、実は「バスに乗ること」だった。
盛岡市の循環バス「でんでんむし」にも乗ったし、通常の市内バスにも乗った。
私の住む地域にもバスは走っているものの、実際に乗ることはほとんどなく、「本当に久しぶりにバスに乗ったなあ」という感覚だった。
慣れない土地でバスに乗るというのは、思った以上に難しいことだ。地名も地理もわからない。料金もいくらかかるのかわからない。それでも今回、バスに挑戦し、無事に目的地へたどり着けたということが、旅の大きな醍醐味となった。
バスに乗ると、その土地の人になったような気持ちになる。現地の生活の一部に溶け込んで、「私もここに住んでいますよ」と言うような、そんな“お試し体験”ができるのが楽しい。
旅とは、言うなれば「その土地の人間になりすます行為」なのかもしれない。写真を撮るときに着飾るように、旅では自分をその土地の色に染める。旅行とは、そんな行為なのかもしれない、そんなことをふと思った。
たった一日の旅では、その土地と深く向き合うことは難しいかもしれない。けれど、その土地の風のやわらかさや、空気の匂いに触れたとき、「ここなら住んでもいいかも」と遺伝子レベルで思うことがある。逆に、「ここは観光地としては素敵だけれど、私が住む場所ではないな」と感じることも。
“風に触れる”ということは、もしかしたらとても大切なことなのかもしれない。
普段、風を意識せずに生活しているけれど、自分の町の風が本当に自分に合っているのか——そんなことを確かめるように、今日は少し“旅行者の気分”で一日を過ごしてみようと思う。

#100日連続投稿チャレンジ92日目